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Maison BeaulieuMAISON BEAULIEUAB ÉDITIONS · フランス料理と欧州歴史記録の出版館
警察と暗黒街 · 英国

品々は館を離れてはいなかった

女中サラ・マンサーの目に映ったものは、押し込み強盗の凶行と思われた。だが、主の寝所、次いで従僕の部屋の幅木の下から現れた品々は、このロンドンの夜に潜むもう一つの真実を静かに語り始める。

サラ・マンサーは、階下へ降りる前にまず従僕の部屋の扉を叩いた。住まう者誰もが互いの起き臥しの時刻を知り尽くしているこの手狭な屋敷において、夜明けを告げるいつもの習いである。それから数分と経たぬうちに、彼女は息せき切って階段を駆け戻ることとなった。階下では引き出しがことごとく引き出され、家財は乱れ、包みが床に打ち捨てられて、表の扉も錠が外されたままであった。彼女は寝ている男を起こしに戻ったはずであったが、部屋の従僕は、すでに身支度を整えて立っていた。

後に公判記録へと書き留められることとなる数々の不審な符合のうち、これもその一つであった。普段のフランソワ・ベンジャマン・クールヴォワジエは、朝の身づくろいにもっと時間をかける男であったからだ。しかしその朝のサラに、その違和へ思いを巡らせる暇などあろうはずもなかった。家に盗賊が押し入ったと知れれば、誰しも助けを求めに走った相手を真っ先に疑いはしない。従僕は彼女とともに階下へ降りた。何をおいてもまず、主へ知らせねばならなかった。

ウィリアム・ラッセル卿の寝所は三階にあった。クールヴォワジエが窓際へ歩み寄るあいだ、サラは寝台へと近づいた。老いた主を眠りから呼び覚ますいつもの気遣いは、枕の上の赤黒い染みを目にした瞬間、ことごとく無に帰した。卿は喉笛を掻き切られ、すでに事切れていた。サラは悲鳴を呑み、助けを求めて外へ飛び出した。一八四〇年五月六日、パーク・レーンにほど近いノーフォーク街。ほんの数時間前までいつもの平穏を保っていた屋敷は、たちまち見知らぬ人垣で埋め尽くされた。

その館は、決して豪奢な宮殿の類ではなかった。各階に二部屋ずつ、女中たちが朝から晩まで行き来する階段、半地下の台所、そして従僕にあてがわれた小部屋。この限られた空間のなかで、一人の貴族の日常は書斎と食卓と寝台の間を行き来するだけであった。卿は倶楽部へ通い、夕餉のために戻り、読書に耽り、就寝の支度を言いつけるために呼び鈴を鳴らした。長年やもめ暮らしを続けていた。いかに名門の血筋を引いていようとも、最期の日々の目撃者が、ただ朝の珈琲を運んでくる奉公人たちだけという境遇もあり得るのだ。

スイス生まれの若い男、クールヴォワジエがこの屋敷に雇われてから、まだ日浅かった。しかし、他の使用人たちに小言を漏らす程度には家の勝手を呑み込んでおり、主が大事にしている品々がどこに収められているかを嗅ぎつけるにも十分な時を過ごしていた。捜査の記録において、後から振り返れば他愛もない不平不満が途方もなく重大な意味を帯びてくることがある。言いつけられた指図を忘れた、使い走りを仕損じた、主の機嫌を損ねた、といった類である。だが、日々の些細な軋轢のすべてを凶行の兆候とみなすのは早計に過ぎよう。いかほど小言を食らおうとも、人を手にかけることなどなく勤め上げる奉公人は幾千といる。この館で起きた凶変を解くには、気難しい老主と不満げな従僕というありふれた図式以上のものが必要であった。

事件の前夜、御者への言いつけが滞ったため、卿は倶楽部から辻馬車で帰宅していた。夕食は滞りなく終わった。二人の女中、サラと料理番のメアリー・ハネルは引き揚げ、最後の用向きを果たすためクールヴォワジエだけが残された。出入口の戸締まりは確かになされた。夜も更けたころ、主の呼び鈴が鳴った。夜がいつものように明けていれば誰の気も引かなかったであろうこの一連の所作が、下手人を追う者たちにとっての端緒となった。

屋敷の扉という扉を、一つずつ改め直さねばならなかった。表の扉、酒の買い出しに使われる勝手口、従僕の小部屋へと続く通路。クールヴォワジエはある扉の傷を指し示し、盗賊どもはここから押し入ったに違いないと申し立てた。そこには、現場の荒らされようを「外から来た何者か」の仕業に仕立て上げる、実によく練られた説明が用意されていた。だが、警察の眼をごまかすことはできなかった。屋敷は確かに物取りの凶行を物語っていたが、あまりにも都合よく整えられたその様が、かえって捜査官たちの疑念を呼び覚ましたのである。

丸めて包まれた衣類の中に、いかにも盗賊の分捕り品らしく雑多な品々がかき集められていた。その中には、わざわざそのような大げさな包みにしなくとも、懐へ滑り込ませて持ち去れたはずの小道具まで混じっていた。一方で、乱暴に開け放たれた引き出しには、ほとんど手がつけられていないものもあった。これらはいずれも、それだけで特定の者を犯人と断定する証拠にはならない。だが、押し入ったはずの賊が、持ち去りもしなかった品をなぜわざわざ見せつけるように残していったのか、疑念を抱くのは当然のことであった。

真に失われたものは何であったのか。紙幣、懐中時計、宝石、硬貨。消え失せた品々の目録が作成されるにつれ、荒らされた室内の光景は冷徹な輪郭を取り戻していった。従僕の所持品がくまなく改められたが、期待された証拠はすぐには出なかった。それでも彼は監視下に置かれた。この差は小さくない。警察の心証が証拠に先行することはままあるが、確たる物証を得られぬ焦りをそのまま犯人性への補強とみなすのは危うい。捜査官たちには、異国の従僕という胡散臭さや、遺骸を前にした狼狽以上の何かが必要であった。

五月八日、探索の手は床板すれすれの隙間にまで及んだ。クールヴォワジエの使っていた部屋の幅木の背後から、指輪が、銀貨が、そして屋敷の者が見覚えのある品々が次々と姿を現した。姿を消していた紙幣もまた、そこに隠されていた。従僕の逮捕後も探索は続けられ、五月十三日には、流し元の鉛板の裏に仕組まれた隠し場所から懐中時計が発見された。盗賊が持ち去ったかに見えた品々は、何一つ屋敷の外へは出ていなかったのである。それらはただ、本来の持ち主から隔てていた覆いが外されるのを待っていたに過ぎなかった。

この発見の場を包んだであろう沈黙のなかで、疑惑の重みは決定的に変わった。従僕の日常の起居する場所に誂えられた隠し場所は、廊下に偶然落ちていた宝石とはわけが違う。次々と見つかる品々が互いに辻褄を合わせ、押し込み強盗の茶番は破綻した。人を殺め、家中を荒らし回りながら、奪った金を幅木の裏に呑気に置き去りにするような盗賊など、あろうはずがなかった。

収監されたクールヴォワジエは、公判に向けた弁護の準備を迫られた。彼のために同胞の外国人使用人たちが醵金を募り、弁護費用を用立てた。支援の手を差し伸べた彼らは、その後の数週間に明らかとなる事実をまだ知る由もなかった。イギリスの富貴な家で起きた血生臭い罪が、そこで働く哀れなスイス人にすべてなすりつけられ、安易に葬り去られるのではないか。彼らの抱いた恐れはもっともなものであった。その善意を汚す筋合いはない。被告人を助けるということは、その罪過の有無をあらかじめ知ることではない。命を奪われる前に、正当な審理を尽くさせることにあるのだから。

六月、裁判の報を聞きつけ、傍聴席の名札に知己の名を探すような上流階級の群衆が押し寄せた。高名な被害者の名だけでも、法廷を埋めるには十分であった。しかし、審理を決定づけた証拠は、そうした華やかな社交界とは縁遠い場所からもたらされた。レスター・プレイスにある、マダム・ピオレーヌの営むフランス人向けの安宿である。そこへ銀器一式が預けられていたのだ。それらがラッセル卿の遺品であることが確認され、公判のさなかに突如浮上したこの事実が、従僕のこれまでの不可解な足取りに決定的な意味を与えた。

この露見は弁護団を直撃した。当時の記録によれば、クールヴォワジエはこの時ついに弁護人たちへ己の犯行を認めたという。彼らの前に立ち塞がった苦悶は察するに余りある。依頼人が犯行を認めたからといって弁護を受ける権利が消えるわけではないが、かといって彼を救うために無辜の者を軽々に疑うことも許されない。弁護人チャールズ・フィリップスの法廷での立ち回りは、後に激しい論争の的となる。弁護団は、自らの依頼人がもっとも肝心な事実を隠し立てしていたことを、あまりにも遅く知ったのである。

陪審はクールヴォワジエに有罪の評決を下した。後に公にされた自白録のなかで、彼は盗みが露見して職と信用を失うことを恐れたあまり凶行に及んだと語っている。その告白は筋の通った説明を与えてはくれるが、語った当人の内奥までもが容易に透けて見えるわけではない。罪人とても己の物語を紡ぐものだ。一八四〇年七月六日、若者はニューゲート監獄の門前にて露と消えた。街頭に溢れた瓦版や読売は、彼の似姿や今際の言葉、悔恨の情、果ては民衆がいかにこれを受け止めるべきかという道徳的教訓までもを書き立てて売り捌いた。

一方、サラ・マンサーの名は、はるかに短くつつましい足取りとともにこの事件に留まり続けている。ある部屋の扉を叩き、階段を降り、また駆け上がり、そして冷たくなった主の枕元に立ちすくむ――。この捜査の顛末は、懐中時計と銀器の行方を追うだけでも事足りるかもしれない。だがそれでは、あの惨禍を誰よりも早く言葉にして告げねばならなかった一人の女の戦慄を見落とすことになる。ロンドンの街が下手人の首を眺め、読み物を買い求める群衆で沸き返るより前に、主の二度と応えぬ部屋から逃げ出し、恐ろしいその部屋へ足を踏み入れてくれる誰かを必死で捜さねばならなかったのは、他ならぬ一人の女中であったのだから。

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この実在事件の記録をお読みいただきありがとうございます。本事件をもとに3つの小説企画(中篇・長篇・三部作)を構想しています。あなたが最も読みたい作品にぜひご投票ください。

中篇小説(ノヴェラ)

最初の階段

主が何者かに殺害された屋敷で、一人の女中が同じ数分間の出来事を三度証言させられる。尋問を重ねるたびに些細な細部の意味が変容し、職を失うまいとした己の怯えが、すでに真犯人へ決定的な猶予を与えていたことに気づく。ある一日の朝と、目撃者がついに口を開くまでの葛藤を描く中編。

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長篇小説(ロマン)

ノーフォーク街の鍵

料理番の女中とフランス人宿の女将が、殺人容疑をかけられた従僕について互いの知る事実を突き合わせる。奉公人の斡旋所、異郷の徒の連帯、そして主家が内々に始末してきた小盗癖の数々。無実の者を救うため、二人はかつて助けを約束した男を法へと引き渡す決断を迫られる。長編小説。

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大河三部作(トリロジー)

仕える者たち

富裕な屋敷と使用人たちの仲介役となった元女中を追う、三代の探偵譚。第一巻では物取りに見せかけた偽装殺人を、第二巻では身元保証を売買する推薦状密売の闇を、第三巻では財産の計算を差配していた者たちの消滅とともに霧散した莫大な遺産の行方を描く。扉の向こう、生活の時刻、そして家の秘密を知る者だけが持つ、目に見えぬ権力を炙り出す三部作。

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歴史的典拠と文学的再構成について

本稿の執筆にあたっては、ニューゲート監獄の記録を精読した。また、一八四〇年にE・ロイドより刊行された当時の瓦版(ファクシミリ版)を参照し、OCR翻刻により照合を行った。これにより、サラの証言、従僕の部屋の前を二度通った経緯、上着を脱いだままの身なり、助けを求める叫び、そして五月六日の外科医の到着が裏付けられている。従僕の身元、犯行の様態、発見された物証、および処刑期日は主にニューゲートの公記録に拠っている(瓦版の全容解読には至っていない)。使用人たちの人名の綴りには当時の文献間で揺らぎが見られる。本文では弁護人フィリップスをめぐる職務上の倫理論争に裁定を下すことは避け、同胞使用人たちによる醵金の動機についても単一の定説に帰することはしなかった。自白録はあくまで本人の主観による弁明であり、その内面の完全な証左とはなし得ない。なお、懐中時計の発見は逮捕後の五月十三日であり、校閲によりこの時系列の正当性を確認した。

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