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Maison BeaulieuMAISON BEAULIEUAB ÉDITIONS · フランス料理と欧州歴史記録の出版館
裁判とスキャンダル · オーストリア

ハイドン小路の血塗られた紙幣

一八六七年のウィーン。十九歳のエリーゼ・コルプが惨殺された事件は、やがて女中カタリーナ・ペトルシルカとその許婚である靴職人アルベルト・トロールの検挙へと至る。カタリーナは強盗の加担を認め、凶行はトロールの手によるものと告発した。対するトロールは、自宅から押収された紙幣、血痕の残る衣類、現場付近での目撃証言を突きつけられながらも頑として無罪を主張する。法廷は両名に有罪を下し、関与を疑われたカタリーナの母には無罪を言い渡した。

一八六七年、聖霊降臨祭の月曜日、午後四時半のことである。教会から帰宅したヴィマー夫人は、店舗の戸も台所に通じる扉も固く閉ざされているのを不審に思った。仕事場のカーテンはことごとく引き下ろされている。十九歳になる義理の娘エリーゼ・コルプは、二人の幼い子供の守りを任されていたはずであった。最初は友人の家へでも出向いたのかと思われたが、子供らは誰も外へ出てゆく姿を見ていない。夫人は次男のアウグストを寝室の小窓から忍び込ませ、内側から閂を外させようとした。やがて蒼白の面持ちで戻った少年は、震える声で叫んだ。「リリが死んでいる、誰かに殺されたんだ」

急報に駆けつけた隣人らが扉を押し破ると、仕事場の床にエリーゼが無残に横たわっていた。喉は深く掻き切られ、衣服は乱れ、ポケットは引き裂かれていた。隣室に置かれていた家主ローレンツ・ヴィマーの書架はこじ開けられ、蓄えていた金が消え失せている。床には紙幣の端切れや利札が散らばっていたが、大口の金子はすべて持ち去られていた。出入口は内側から施錠されており、台所の鍵は見当たらない。流しには犯人が血痕を洗い流したとおぼしき水桶が残されていたが、凶器となった刃物はどこにも見当たらなかった。

凶行は白昼堂々、通りに面した家屋の中で敢行されていた。最大の謎は、いかにして兇手配が侵入を果たし、なぜ二人の子供が何事も耳にしなかったのかという点にあった。調べが進むにつれ、エリーゼはその日の午後、仕事場でひとり針仕事をしていたことが判明した。四時頃には二人の娘がその姿を見かけており、外への誘いを断っていたのである。さらにその日、隣家の製造業者スラヴィク方に雇われていた女中のカタリーナ・ペトルシルカが、着替えを口実に子供たちを屋根裏部屋へ連れていき、「物を取りにいく」と言い残して置き去りにしていた事実が浮上した。

カタリーナの許婚であるアルベルト・トロールは、独立して自らの工房を構えたいと望みながらも、元手に事欠く靴職人であった。カタリーナは雇い主の用務でヴィマー家に両替に赴くことが度々あり、屋敷の間取りはおろか、主人が紙幣を隠している書架の位置まで熟知していた。後の自白によれば、留守を預かる女が一人きりになる折を見計らい、金を奪おうと持ちかけたのはトロールであったという。トロールは彼女に剃刀の購入を命じ、カタリーナも数週間にわたって躊躇したものの、ついにその指示に従ったとされる。

その月曜日、ローレンツ・ヴィマーは隣家の商人と連れ立って郊外へ赴き、下女には非番が与えられ、夫人は教会へ出払っていた。屋敷に残るはエリーゼと幼子のみ。好機到来と見たカタリーナは、子供らを屋根裏へ言いくるめて閉じ込めると、近傍で息を潜めていたトロールのもとへ駆け戻った。「今がその時よ」と女が告げると、男は「よし、行こう」と応じたという。カタリーナは買い置いてあった剃刀を手に店舗の扉から忍び込み、トロールは台所の口から踏み込んだ。

仕事場で縫い物をしていたエリーゼは、トロールとも面識があった。カタリーナの供述によると、トロールは背後から忍び寄って少女の頭を抱え込み、カタリーナがその両手を押さえつける間に一気呵成に喉首を掻き切ったという。法医の検視録が示す通り、傷口は深く致命的で、迷いのない一太刀によるものであった。少女が崩れ落ちると、二人は隣室の箪笥をこじ開けようとしたが果たせず、やがて鍵を見つけ出して書架を開け、紙幣と現金を掠め取った。トロールは台所の桶で血を洗い、カタリーナは凶器の剃刀と鍵を厠の壺へ投げ棄てた。女は血に染まった衣類を屋根裏に隠し、二人は連れ立って現場を去った。

奪った金はトロールの下宿に隠された。二人はそのまま金銀細工師の店へと向かい、祝言のための指輪を二つ買い求めている。その夜は郊外の居酒屋で平然と過ごし、夜の九時頃になってカタリーナは震えを装いながらヴィマー家へと戻った。翌日、女は鼻血がついたと偽って血染めの衣服を実母に託し、家賃の足しにと二十五フローリンを手渡した。母親はそのうちの一着を自ら洗い、もう一着は洗濯女へ回した。

捜査陣はまず紙幣の足取りを追った。盗難に遭った券種や記番号を官報で布告したところ、貧しいはずのカタリーナが高価な衣装を身にまとい、五フローリンや十フローリンの札を次々に使っているとの情報が入った。女は富くじに当たったのだと申し立てたが、六月十五日、警察署でその真偽を追及されるや否や、たちまち蒼白となって喚き立てた。「神さま、私に何の用です! 私はリリを殺してなんかいません!」この叫びが仇となり、女は即座に拘束された。スラヴィク方の家宅捜索では、屋根裏からクリノリン、洗い立ての青いスカート、血痕の残る裂けた茶色のスカートが押収され、厠からは剃刀の刃と紛失していた台所の鍵が引き揚げられた。トロールの部屋からも盗難品と一致する紙幣が発見され、その中には血の痕がついたもの、さらには卓上用の刃物や装飾品までもが含まれていた。

カタリーナは押収された紙幣を認め、法廷において事の次第を余すところなく自白した。計画を企て、剃刀を買わせ、とどめを刺したのはトロールであり、自分はただエリーゼの手を押さえていただけに過ぎないと主張した。また、実母は事件に何一つ関わっていないとも証言した。一方のトロールは一切の関与を否定した。金はカタリーナが持ち込んだものであり、富くじの当せん金、あるいは実家からの持参金だと聞かされていたと弁解し、札を受け取った日時の供述を二転三転させた挙句、紙幣の染みは肉屋へ立ち寄った際についたものだと強弁した。現場付近でカタリーナを待ち合わせ、指輪を買った事実は認めたものの、ヴィマー家の中に一歩たりとも足を踏み入れてはいないと主張し続けた。

検察側の立証は、カタリーナの自白のみに頼るものではなかった。犯行直前の時刻に現場付近に佇むトロールの姿や、犯行後に二人が連れ立って立ち去る様子が目撃されていた。ある若い女中は、カタリーナの前腕に血がこびりついていたのを見たと証言した。さらに別の二人の証人は、凶行の直後にトロールが煙草屋へ駆け込んできて、「人殺しの皮を剥いで革紐にしてやるべきだ」と口走ったと証言した。男はそれを翌火曜日のことだと主張したが容れられなかった。警察はまた、トロールが金の出所について虚偽を重ね、警察の捜査が及ぶと知るや隠蔽を図った事実も突き止めた。しかしながら、男の衣服に付着していた染みについては、それが人血であるか否かを科学的に断定するには至らなかった。

八月一日、公判の幕が上がった。法廷においてカタリーナは、トロールに命じられて剃刀を買い、彼がエリーゼの throat を掻き切ったのだと言明した。トロールは、女が自らの破滅に道連れにしようと虚言を弄しているのだと反駁した。両名が対決させられた際、カタリーナは男の顔を真っ向から見据えて言い放った。「お前がやったのよ。面と向かって言ってやるわ」。男はなおも女を嘘つき呼ばわりした。台所からの侵入や被害者の手を押さえた詳細を語るカタリーナに対し、トロールは、女が単独で兇行に及び、後から自分に金を渡したに違いないと言い張った。

カタリーナの母エリザベート・ペトルシルカもまた、衣類の洗濯と金の受領を理由に共犯として起訴された。しかし母親は、衣服の染みもフローリン紙幣も、いかなる素性のものか知る由もなかったと潔白を訴え、裁判所は証拠不十分として無罪を言い渡した。他方、主犯の二人に対する判決は峻厳を極めた。トロールとカタリーナの双方が強盗殺人の罪で有罪と宣告されたのである。カタリーナには絞首刑、トロールには終身重禁錮が言い渡された。当時のオーストリア法廷の法規では、自白なき場合、あるいは直接の目撃証言を欠く場合には死刑を科すことが禁じられていたため、検察官もトロールに対する極刑の求刑を断念せざるを得なかったのである。

判決が下されると、カタリーナはその場で母に許しを請うた。トロールは依然として無実を叫び、上訴を申し立てた。後にカタリーナの死刑は皇帝の恩赦によって終身刑へと減刑され、女はノイドルフの監獄へ、トロールはクラウゼンの要塞監獄へと送致された。『新ピタヴァル』は記している。エリーゼの真の仇敵と見なされ、憤激に沸き立つ群衆が見守るなか、トロールは薄笑いを浮かべながらウィーンの街を去っていった、と。

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この実在事件の記録をお読みいただきありがとうございます。本事件をもとに3つの小説企画(中篇・長篇・三部作)を構想しています。あなたが最も読みたい作品にぜひご投票ください。

中篇小説(ノヴェラ)

二つの指輪と一枚の領収書

とある町。若い仕立屋の娘は、まだ初給金も出ていないはずの許婚が、真新しい二つの婚礼指輪を携えてきたことに胸騒ぎを覚える。娘の祝言を何としても守りたい母親は、血痕のついた上着を密かに洗い落とすが、その裏地から姿を消した許婚の雇い主の名が記された領収書を見つけ出してしまう。金を返して婚姻を諦めるか、それとも無実の者が疑われるのを黙過するか。血塗られた富を未来への誓約へと変えてしまった男女の葛藤を描く中篇。贈り物の意味が一変する心理的緊張を好む読者へ。

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長篇小説(ロマン)

婚礼の代償

港町ポール=エロワ。独立して店を構えることを夢見る二人の職人見習いは、開業資金も集まらぬうちから祝言の指輪を買い求めた。やがて雇い主の金庫が空になり、一方が他方を強盗の首謀者として告発する。許婚の娘は、自分が知らぬ間に盗金の隠し場所として利用されていた事実を知り、洗濯稼業の母親は袖口の汚れから真相を悟る。祝言を救うべきか、法廷で真実を証言すべきか。不義の金によって結ばれた婚姻の絆が、やがて法廷劇へと雪崩れ込んでゆく長篇小説。

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大河三部作(トリロジー)

裏地の染み

二十年の歳月を隔てた三つの時代を舞台に、ひとつの洗濯場にまつわる因縁を描く三部作。第一部では、娘の婚礼を守るために血染めの衣服を洗った母の苦悩。第二部では、工房を買い取ろうとする若夫婦のために偽のアリバイ工作を拒む女工の矜持。第三部では、古いドレスの裏地から一枚の受領証を見つけ出し、祖母の婚礼資金の恐るべき出所を暴かざるを得なくなった最後の後継者の選択を描く。一枚の布が語る秘密と、自白がもたらす過酷な代償を世代を超えて描き出す大河小説。

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歴史的典拠と文学的再構成について

本篇は『新ピタヴァル』(Der neue Pitaval、Leipzig, F. A. Brockhaus, 1883年刊、第4続篇第3部第2版)所収の法廷記録「アルベルト・トロールとカタリーナ・ペトルシルカ(強盗殺人――ウィーン)一八六七年」(167–205頁、OCR行番号7477–9283)の全容に基づいている(行番号9284より始まる「カプラー谷の亡霊」は除外)。同書によれば、犯行は一八六七年六月十日の聖霊降臨祭月曜日に発生し、公判は同年八月一日に開かれた。カタリーナによるトロールへの告発、男の全面否認、双方に対する有罪判決、ならびに母親への無罪放免が詳細に記録されている。なお、衣類に付着した染みが人血であるかどうかの鑑定結果は確証を得られなかったと記されている。これらの記述は後年に編纂された『新ピタヴァル』の叙述に拠るものであり、当時の公判原記録との直接の突き合わせは行われていない。

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