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Maison BeaulieuMAISON BEAULIEUAB ÉDITIONS · フランス料理と欧州歴史記録の出版館
裁判とスキャンダル · オランダ

繕われた袖

放火と窃盗の罪で死刑を宣告された女中アドリアナは、看守の破れた上着を繕う許しを得る。最後の一針が迫る。針を返せば、この冷たい獄舎で引き留め得た唯一の人肌の温もりさえも、永遠に去ってしまうのだ。

「それ以上動かすと、裂け目が広がりますよ」

女看守はすぐには答えなかった。高窓から射し込む薄明かりにかざした袖口の、肘のあたりがほつれ、身じろぎするたびに傷口を広げていた。アドリアナはそっと手を差し伸べた。ひと針刺せば留まるものを、みすみす布地を引き裂いてゆく様を眺めているのは、耐えがたいことに思えたのだ。

「お寄越しなさい」

「おまえに渡す針などない」

「その袖に当てる針なら、お持ちでしょう」

看守は腕を下ろした。手桶の水を運んできたまでのことである。千八百十三年、春のデン・ハーグ刑務所において、断頭台へ送られる囚人に手仕事を与える務めなど、この女には課されていなかった。アドリアナ・バウマンは死なねばならぬ身である。破れた袖の修繕など、処刑の準備のどこにも居場所のないはずのものだった。だからこそ、それは何ものにも代えがたく尊かった。

「ここで見張っているよ」と看守は言った。

「ええ、そうしてください」

看守は上衣を脱ぎ、頭巾の折り目から糸を通した針を抜き取ると、粗末な机の上に置いた。アドリアナは黙ってそれを待った。人に物を預ける際、入念に検分するその手つきを、彼女はよく知っていた。奉公先でも、リネンを数え、銀貨を改め、使いに出た下女の足取りを計ったものだった。ここでは、一本の縫い針がその帳面に載る。彼女は袖を引き寄せ、布の端を裏返した。

最初の一針は、不出来であった。指先はとうにかじかんで敏捷さを失い、光はあまりに高いところから落ちていた。看守は丸太の腰掛けを引き寄せ、窓辺へと寄せた。敷石を擦る木部の重い音が狭い牢内に響く。アドリアナは弾かれたように顔を上げ、すぐに手元へと視線を戻した。獄舎の中では、ありふれた物音の一つひとつが、心身を刃のように貫くことを知ったばかりだった。

「もっと手前から縫い直さねばなりませんね。地がすっかり弱っています」

「できる限りのことでいい」

「人は頼むときにはそう言うものですが、仕上がれば雑だと咎めるのです」

看守の口元がかすかに動いたが、笑みには至らなかった。女の名はマリットといった。それが本名なのか、囚人たちに対して便宜上名乗っている名なのか、アドリアナには知る由もなかったし、尋ねもしなかった。ふたりにはそれぞれ果たすべき役目があった。ひとりは針を運び、もうひとりはその手元を見張るのである。

ようやく、糸が引っかかりなく布を通り抜けた。アドリアナの脳裏に、かつて召し使われていたニーウェルケルクのアリ・ファン・フリートの屋敷がよみがえった。去る八月二十一日から二十二日にかけての夜、建物は業火に包まれた。人々が家財の運び出しに奔走する混乱のさなか、幾多の品が消え失せ、やがてその一部がハウダの古物商の手元から見つかった。彼女は窃盗を認め、次いで放火を自供した。二月の裁判で死刑を言い渡され、恩赦の願いも退けられた。これら少数の事実が、今や冷厳な檻となって彼女を取り囲み、いかなる針を用いてもその綻びを繕うことは叶わなかった。

マリットは縫い目をじっと見つめていた。アドリアナは、この女が自分の顔を見てくれればよいのにと思ったが、すぐにその思いを打ち消した。人の顔を見つめれば、そこに応答が求められる。だが布地ならば、ただ握られているだけで満ち足りているのだから。

「何か仰ったらどうです」と、彼女は言った。

「何をだ」

「仕事をしてもらったときに、人が口にする言葉を」

「……すまないね」

その言葉は、ふたりのあいだに、場違いなほど澄んだ響きを立てて落ちた。この期に及んで、自分に感謝を述べる者がいる。若い女は糸を強く引きすぎ、ほどいてやり直した。これまでの数週間、彼女は返答を強要する詰問ばかりに囲まれて生きてきた。だがこの礼の言葉は、何も要求してこない。どう受け止めてよいのか、彼女には分からなかった。

「まだ終わっていませんよ」

「見ればわかる」

マリットの甲には、古い火傷の跡が白く残っていた。アドリアナはその痕跡を目で追い、針の手を止めた。看守は、秘め事を暴かれたかのように指をすぼめた。

「煮え湯の鍋だよ」と、女は言った。

「訊きもしないのに」

「ああ、そうだな」

ふたたび沈黙が降りてきたが、その重みは先ほどとは異なっていた。アドリアナは袖を光にかざした。裏に当て布をしなければ、縫い目が引きつれてしまうだろう。彼女は自分の囚人服の裾から布切れを切り取ろうと申し出たが、マリットは首を振った。死刑囚の衣服に手をつけてはならぬ定めだった。

「いつまで着るものだというのです」

看守は扉の方へ顔を背けた。廊下を誰かが通り過ぎる足音がした。ふたりは、その足音が遠ざかるのを息を潜めて待った。助けを呼ぶ意志など、どちらにもなかった。やがてマリットは上衣の隠しに手を差し入れ、使い古したハンカチを取り出した。

「端のほうを使いな。それで足りるだろう」

アドリアナは手を出さなかった。

「切らねばなりませんよ」

「承知の上だ」

「破れたものが二つに増えるだけです」

「一つは直る」

今度は、若い死刑囚の唇に思わず微苦笑がこぼれた。マリットは小鋏で細い布片を切り落とし、すぐに道具をしまい込んだ。アドリアナはその布を破れ目の下に滑り込ませた。繕った跡は歴然と残るだろう、と彼女は言った。連れ合いの女は肩をすくめた。ただ着られるようになればよい、それ以上は望まぬ、と。

針足が進むにつれ、アドリアナの手は自然と緩慢になっていった。途中でわざとやり直すことも、糸が切れたと言い繕うことも、より明るい場所を求めることも容易だと知っていたからだ。この針仕事こそが、人の気配をかろうじて引き留めてくれている。袖が仕上がってしまえば、マリットは上着と針を取り戻し、冷徹な監視者の距離へと戻ってしまうだろう。この部屋を立ち去る彼女を阻む権利など、誰にもないのだ。

「もうすぐ終わるかい」

「ええ、もうすぐです」

彼女は最後の一筋に糸を通した。結び目さえ作らねば、まだ終わらずに済むはずだった。宙に浮いたままのアドリアナの手を前に、マリットもまた身じろぎを止めた。腰を下ろして以来初めて、監視の冷たい空気が肌に触れた。看守の眼差しが、布地から離れ、鈍く光る鋼の針の先を追い始めたのである。アドリアナはその変化を敏感に感じ取った。針はもはや貸し与えられた道具ではなく、回収せねばならぬ危険な刃物へと戻ったのだ。

若い女は、静かに結び目を作った。

そして糸から離して、針を机の上に置いた。緩やかで、迷いのない、挑発の色を含まぬ所作であった。彼女は上衣をマリットの方へ押しやり、その縫い目を否応なく見つめさせた。マリットはまず針に欠けがないかを確かめてから、手際よく頭巾に刺した。それから袖に腕を通し、肘を曲げては伸ばした。布地はほつれることなく耐えていた。

「これなら用を足す」と看守は言った。

アドリアナは待った。マリットは言葉を継いだ。

「いい腕だ」

それは、あたかも雇われのお針子にかけるような声であった。死刑囚はうなだれ、今度は何も言葉を返さなかった。己の犯した罪も、灰に帰した屋敷も、何ひとつ元通りにしたわけではない。いまさら施したわずかな善行とて、あの劫火を消し去ることはできないのだ。彼女はただ、己の手託された仕事を最後までやり遂げたに過ぎなかった。

マリットは部屋を出る際、針は持ち去ったが、端を切り取られたハンカチは机の上に残していった。アドリアナはそれを丁寧に畳んだ。取り紛れて置き忘れたのか、それともわざと残したのかは分からなかった。ただ、彼女は看守を呼び止めることだけはしなかった。

千八百十三年五月一日、アドリアナ・バウマンはデン・ハーグの広場にて露と消えた。マリットはその日、修繕された上着を着て当直についた。肘のあたりがわずかに引きつれていたが、彼女はそのまま身に纏い続けた。

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中篇小説(ノヴェラ)

最後の一針

恩赦の道も断たれた死刑囚と一人の女看守が、互いを赦すことも裁くこともなく、ただ一つの手仕事を通じて限られた時間を静かに引き延ばしあう密室の中編小説。

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長篇小説(ロマン)

火の残滓、灰の記憶

炎上した屋敷から持ち出され古物商へと流れた品々を手がかりに、奉公人の女中が抱えていた人知れぬ屈託と屋敷の暗部、そして破滅へと至る軌跡を精緻に描き出す歴史長編。

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大河三部作(トリロジー)

屋敷、獄舎、断頭台

放火事件をめぐる三部作構想。第一部「屋敷」では住処を失った者たちを、第二部「獄舎」では刑の執行を待つ囚人とその監視者を、第三部「広場」では刑死者の記憶を受け継ぎ語り継ぐ者たちを描く。

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歴史的典拠と文学的再構成について

本篇は史実に基づく創作である。看守マリット、袖の修繕、切り取られたハンカチ、心理描写およびすべての対話は虚構である。史実の拠り所は、アドリアナ・バウマンの実在、アリ・ファン・フリート家での奉公、1812年8月21日から22日にかけての放火、ハウダで転売された遺留品、本人の自供、1813年2月の死刑判決、上訴の棄却、および同年5月1日の処刑である。これらは博物館の調査記録、死亡簿、および1813年の公判調書に基づく。作中において新たな罪状を捏造したり犯行の動機を独断で断定することは避けた。なお、生年については資料により異同があるため、特定の年齢は明記していない。

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